2026年の生成AIトレンド「コンテキスト」をGoogle・PFN出身者が語る

Press Release
 
株式会社ブリングアウトは、2026年の生成AIトレンドの中心になる「コンテキスト(文脈)」をテーマに、COO林翔太とVP of AI水谷享平が対談し、AIが“賢い新人”止まりになる原因と打ち手を整理しました。 IBM・PFN出身で大企業AXを牽引する林と、Google等を経て先端技術×経営に精通する水谷が、平均的な最適解では現実の意思決定に届かないが、商談・会議・1on1・チャットなど企業内の非構造データ上で、要約で削がれる文脈を守りつつ圧縮・抽出・補完・再構造化する、対話データを核にしたコンテクストエンジニアリングの重要性を語っています。

登場人物

COO 林翔太 IBM と Preferred Networks(PFN)で AI 事業開発をリード。2022年にBring Out参画後は、大企業向けAX(AI Transformation)プロジェクトを牽引。 VP of AI 水谷享平 東大大学院 → Google → XRスタートアップ STYLY 執行役員 → Tenstorrent を経て Bring Out へ。先端技術と経営の交点に精通する Bring Out随一の “AIオタク”。

“賢い新人”止まりの生成AIに、重要業務は任せられない

生成AIの普及によって、私たちの働き方は一変しました。 議事録を自動でまとめ、提案書を下書きし、膨大な情報を瞬時に整理してくれる。 AIはまるで優秀なアシスタントのように、日々の業務を助けてくれます。 しかし──「AIを導入した」企業は増えても、「AIで経営が変わった」企業はほとんどありません。

「A社の担当者へのメール返信文を作成して」と指示すると、文章そのものは悪くない。 けれど、「過去のやり取り」や「先日の商談での会話」など肝心の文脈理解が足りておらず、結局メールを書き直さなければいけない。

「競合のA社、B社と比較しながら、自社の事業の強みと弱みを整理して」なんて複雑な指示をした日には、AIに対して「勉強不足だよ」なんて思いながら部下に頼み直す始末。

多くのAIは、いまのところ“便利な道具”で終わっています。 本当は、生成AIを使って「単純な仕事は自動化」したいし、「経営レベルの要点整理」までやってほしい。 経営を変えるには、AIを「作業者」ではなく「思考のパートナー」に育てる必要があります。 その鍵が コンテキスト(文脈) であり、Bring Out は 2026 年の中心テーマになるこの技術に、いち早く本気で取り組んでいます。 今回は「2026年の生成AI」をテーマに、Bring Out の生成AI事業をリードする2人に話を聞きました。


1. 2026年の生成AIの本質的トレンドはどこに向かうのか?

AIの根本課題はコンテキスト不足にある

VP of AI 水谷: 最近、AIと一緒に仕様検討や分析をしていると、毎回同じ現象が起こるんです。

  • ロジックは整ってる

  • 文章もきれい

  • でも“本質がズレている”

これは AI の限界ではなく、AIに渡しているコンテキスト(文脈)が浅いからなんですよ。 たとえば新機能を企画する際、人間は「顧客の空気、競合の圧、組織内の背景」など、膨大な“行間”まで踏まえて判断します。 でもAIにはそれを渡さず、「良い案出して」と丸投げする。 そりゃ浅い一般論が返ってきます。

Google時代の仲間や海外のAI研究者と話していても、 「生成AIの本質課題はコンテキストだよね」 という認識が共有され始めました。 2026年は、世界的にもそれが“主戦場”になると感じています。


“平均的な最適解”では、現実の意思決定には届かない

COO 林: 私もAIで意思決定を補助する場面はかなり増えましたが、「綺麗なんだけど、何か違う」という感覚があります。 AIは、統計的には正しい“平均的な最適解”を返す装置なんですが、現実の意思決定は平均値では動かない。

  • 顧客の言葉の「間」

  • 中堅社員の不穏な直感

  • 雑談で出た“キラーワード”

  • 現場に漂う熱量

こうした“行間の情報”が、実際の意思決定を左右するんです。 でもAIにはそれが渡されていない。 材料を渡していないのに「もっと深い答えを」と求めていた自分に気づいて反省しました。

2. 文脈(コンテキスト)はどこに眠っているのか?

VP of AI 水谷: 文脈とはつまり、 空気、含意、背景、経緯、暗黙知── “人間の共有している意味の束”です。 そしてそれは企業のいたるところに散らばっています。

  • 会議録

  • Zoom の音声

  • チャット / Slack

  • 1on1

  • カスタマー対応

  • プロダクト議論

  • メール

  • 雑談のログ

企業が保有するデータの約9割は、数値ではなく言葉でできています。 議事録、メール、レポート、会話ログなどの非構造データです。 実は、そこにこそ企業の本質が眠っています。 経営の意思決定、組織の文化、現場の知恵、顧客の声。 数字では捉えきれない“思考の履歴”です。

ただし、そのままでは AIにとっては“意味づけされていない文字列”でしかない。AIを賢くしたければ、非構造データに“意味の構造”を与える必要があるんです。

対話データが最強の情報源になる理由

COO 林: 非構造データの中で、最も企業が活用するべきは「対話データ」だと考えています。 対話には、

  • 感情

  • 温度

  • 背景

  • 行間

  • 相手の反応

  • 思考の変遷

が“自然に”含まれています。 だからこそ、非構造データの中で 最も情報密度が高い。 現場でよくある光景ですが、

「議事録より、雑談の“実は…”のほうが本質を突いている」

ということ、ありませんか?

  • 「A社は前向きと言ってますが、実は…」

  • 「現場はこの機能あまり好意的ではなくて…」

  • 「担当者のトーンが最近変わっていて…」

こういう“データベースに記録されない文脈”こそ、AIが最も必要としている情報です。

3. なぜ今、対話データが“金脈”になったのか?

VP of AI 水谷: 10年前、対話データは“宝の持ち腐れ”でした。 残すのは簡単なのに、扱うのがとにかく大変だったからです。解析はほぼ手作業で、検索も難しい。 それが、LLM(大規模言語モデル)の登場で状況が一変しました。 LLMは、文章を読むのではなく“文脈を保持したまま理解する”ことができます。

  • 話者交代

  • 流れの遷移

  • 背景の仮説

  • 感情の揺れ

これらを捨てずに読み取れるようになったことで、対話データが初めて“解凍”された。企業の中で最も価値の高いデータ形式へと変貌した瞬間でした。


4. 対話データは「深さ × 速さ × 広さ」を備えた唯一の情報源

COO 林: 対話データが優れている理由は「深さ」「速さ」「広さ」の三拍子を満たす点です。 「結果」ではなく「なぜその結果になったのか」まで分かる深いデータが、現場の最前線からリアルタイムで供給され続けます。しかも、営業など特定部署のみならず、開発や財務など各部署が今話していることを拾い上げ、会社全体のコンテキストとして捉えることができる。 つまり、「すべての商談や社内会議に出席し、顧客の声も現場の声もすべて把握する」といった状態をAIに作ってあげることが、対話データを通じて実現できるんです。

この三拍子を満たすデータは他にありません。 対話データはAI時代の勝ち筋そのものなんです。

 
 

5. 対話を活用するコンテキストエンジニアリング

対話の“海”から、意思決定に効く文脈だけをすくい上げる仕事

VP of AI 水谷: プロンプトエンジニアリングが“質問の作法”だとすれば、 コンテクストエンジニアリングは“世界の見せ方”をデザインする技術です。 AIに正しい答えを出させるには、「どう質問するか」ではなく、「何を前提に考えさせるか」を設計しなければならない。 言い換えれば、AIに“思考の地図”を渡す行為です。 どんな情報をどう整理し、どんな意図を持って与えるか。 その設計力が、AIの出力の質を決めます。

対話データを本当に活用するには、膨大なログからノイズを削ぎ落とし、 意味づけ(コンテキスト)を失わない形で構造化し直してAIに渡す必要があります。 例えば商談データだけでも、500件あれば 1,000万文字 を超える。この量は LLM の入力容量を大幅に超えるため、そのままではAIが扱えないんです。

また、昨今は要約ツールが増えていますが、対話データ活用においてはしばしば逆効果。要約した瞬間に文脈が削がれ、1件500文字の要約にされた商談から“その会社固有の空気や関係性”は消えてしまう。 だからBring Outは、対話データを単純に削るのではなく、

  • 圧縮

  • 抽出

  • 補完

  • 再構造化

を重ねることで、AIにとっての「最強のブリーフィング資料」 へと変換します。これによって初めて、AIが“その会社ならではの文脈”を理解し、深い意思決定に関わるアウトプットを返せるようになるのです。

COO 林: ある大手企業では毎月数千件の対話データ(商談、開発会議、経営会議)をBring Outに流し込んでいただいています。 そこから、

  • 業界別に“今ホットな課題”

  • 受注・失注を分けた決定的な一言

  • 現場と経営の仮説のズレ

などを抽出し、文脈セットとして組み立てる。 その結果、生成AIを活用することで

  • 営業の勝ち筋が再定義されたり

  • 解約リスクの早期検知が自動化されたり

  • 開発ロードマップが刷新されたり

といった変化が生まれています。

 
 
 
 

たとえば、営業の現場で生成AIを活用して「受注率を高めたい」と考えたとします。 多くの企業は商談の文字起こしをAIに読み込ませ、「受注商談と失注商談の差を教えて」と質問します。しかし、コンテクストが欠けていると、AIは表面的な違いしか拾えません。 「提案資料の枚数が多い方が受注率が高い」といった答えになってしまう。 ここで必要なのが“文脈設計”です。 AIに渡す情報を、単なる商談記録ではなく、以下のように整理します。

  • 顧客の業界・意思決定構造

  • 商談時のフェーズ(初回・見積・再提案など)

  • 発言のトーンや頻出ワード(懸念・期待・比較など)

  • 提案に対する反応と結果

この構造化を経てAIに学習させると、 AIは「顧客が“比較検討中”と言った商談では、再提案よりも担当者変更が奏功している」など、“行動の示唆”につながる文脈的洞察を返してくるようになります。 つまり、コンテクストエンジニアリングとは、AIに「データを読ませる」ことではなく、「データの意味を理解させる」ための設計なのです。

この考え方は、経営企画などのマネジメント層にも直結します。 例えば、経営企画の担当者が「自社の受注率が上がっている」と報告を受けたとしましょう。 その時に課題となるのは、それが再現性のある成長なのか、一時的な現象なのかが分からないことです。 現場のマネージャーの声を信じるしかない一方で、マネージャー自身も全ての商談を見ているわけではありません。結果として、N数の少ないランダムサンプリングに頼るしかなく、正確な判断が難しくなってしまう。 しかし、商談データがすべて記録・構造化されていれば、経営企画チームは一次情報の全量をもとに、現場で何が起きているのかを把握できるようになります。 ChatGPTに「なぜ自社の受注率が上がっているの?」と聞いても、一般論的な回答しか返ってきません。 一方で、コンテクストエンジニアリングを施したAIなら、「どの業界・どの商談タイプ・どの意思決定フローで成果が上がっているか」を具体的に示すことができます。 つまり、AIが経営の判断材料を“根拠つきで”提示できるようになるのです。 このように、コンテクストエンジニアリングは現場データを経営判断につなぐ「翻訳装置」として機能します。

コンテクストエンジニアリングは、AIの技術論ではなく、経営の“思考構造”を設計し直すアプローチです。 たとえば、経営会議で「なぜその判断に至ったのか」という議論をAIが解析できるようになれば、組織の意思決定は再現可能なナレッジになります。 戦略立案、事業ポートフォリオ、人材配置── あらゆる意思決定が“自社の思考”として学習され、継承されていく。 AIは経営を代替するのではなく、企業が持つ文脈を鏡のように映し出す存在へと進化していくのです。

7. 文脈が整った未来、AIと仕事はどう変わる?

AIは“作業”を、人間は“文脈”を扱う世界へ移行していく

VP of AI 水谷: 文脈をAIに正しく渡せれば、AIは人間の“作業”の大半を代替すると思います。

  • 会議録の整理

  • 情報収集

  • 叩き資料の作成

  • レポート整形

  • 初期レビュー

こうした“ルールに沿う系の仕事”は、AIのほうが速くて正確です。 では、人間に残る仕事は何か。私は “文脈の発見と移動” だと思っています。

  • 「本当の課題はここだ」と気づく

  • 会議中の違和感を掬い取り、問いに変える

  • 暗黙知を言語化してAIに渡す

  • AIの示唆を正しく解釈して現場に運ぶ

  • 部門間で学びを共有し組織知へ昇華する

こうした行為は、まだAIには難しい領域です。 人間は “手を動かす作業者” から、

  • 文脈を見つける人

  • 文脈を編集する人

  • 文脈を橋渡しする人

へと進化していく。 そして中長期では、 “労働とは何か” の定義自体が変わる 可能性があります。

COO 林: 資料のための資料、会議のための会議、レポートのためのレポート。 こうした“仕事のための仕事”は、ほぼ消えていくはずです。 そうして人間はもっと「濃い価値創造」に集中できるようになる。 Bring Out は、その世界のインフラを“文脈”からつくっていきたいと考えています。


コンテキストエンジニアリングをしない企業はどうなる?

VP of AI 水谷: 率直に言うと、AIモデルがどれだけ進化しても、ずっと“平均的で浅いアウトプット”しか得られないという状態に陥りかねません。 これから差がつくのはAIのモデルではなく、どれだけ深く・広く・速く文脈を渡せるかに尽きます。


終わりに:Bring Out で一緒に創りたい未来

Bring Out が挑んでいるのは、世界的にもまだ名前のない領域です。 扱うのは、人間が積み上げてきた膨大な“対話”。 それを組織の意思決定の土台へと変換し、企業が永続的に学習し続けるためのインフラに変える仕事です。 市場はまだ黎明期。 生成AIは「インターネット創世記の3年目」くらいの段階にあります。 だからこそ、未来は決まりきっていない。 むしろ 未来の答えを一緒に創る人を探しているフェーズ です。

こんな人とは、きっと相性がいい

  • プロダクトだけでも、コンサルだけでも物足りない

  • 技術・ビジネス・戦略・実装、その全部を行き来したい

  • 「まだ名前のついていない仕事」を作りたい

ひとつでも当てはまるなら、Bring Out で得られる景色は唯一無二です。 あなたの問い・視点・経験が加われば、この会社の未来はまったく違う解像度になると思っています。 10年後の日本、そして世界の“対話のインフラ”をどうするか。 その未来を、一緒に形にしていければ嬉しいです。

ブリングアウトに興味を持ってくださった方へ

ブリングアウトはビジネス/開発側の採用を積極的に行なっています。 まずはカジュアル面談からぜひお話ししてみませんか?

ブリングアウトはフルリモート・フレックスタイム制度を導入しています。 従業員の約8割が育児しながら業務にも全力で取り組んでおり、仙台や静岡、福岡など日本各地から参画しているメンバーも多数いるチームです。 自由度の高い働き方を必要としながらも、成長企業、生成AIの最前線で挑戦したい方、ぜひエントリーをお待ちしております!


【関連リンク】


【CEO Comment】

今回の対談を読んで改めて思うのは、生成AIの勝負所は「モデル」ではなく「文脈設計」だということです。 林はIBM・PFNで培った事業開発の経験により、現場の行間が意思決定を動かす現実を、抽象論にせずプロジェクトに落とし込めます。 水谷はGoogleなど最前線の経験から、対話データを“解凍”し、圧縮・抽出・補完・再構造化でAIを思考のパートナーに育てる道筋を描ける人です。 私はこの2人を、一次情報経営とコンテクストエンジニアリングを本気で社会実装するプロフェッショナルとして信頼しています。 技術・ビジネス・戦略・実装を行き来しながら、まだ名前のない仕事を一緒につくりたい方には、ブリングアウトは最高の環境です。

◾️ホームページ:https://www.bringout.biz/